社員がAIを使う前に、会社で決めておきたい3つのルール

机に向かう人とパソコンの画面のAIとのやりとり、ルールのチェックリスト、入れてはいけないパスワードの×印、守りの盾のイラスト

この記事について

この記事は、「社員がChatGPTなどのAIを使っているらしいけれど、会社として何を決めればいいのか分からない」という経営者・担当者の方に向けて書いています。むずかしい言葉はできるだけ使わずにお話しします。内容は2026年10月30日時点の情報です。

「見積書の文章、AIに整えてもらいました」
「お客さまへの返信、AIに下書きさせています」

社員の方から、こんな話を聞いたことはありませんか。ChatGPTをはじめとするAIは、無料でだれでもすぐに使えます。文章づくりや調べものがぐんと速くなるので、気づかないうちに、仕事の中で使われていることも少なくありません。

2026年1月の調査では、中小企業の約6割(64.9%)が「会社としては導入しておらず、使うかどうかは社員の判断にまかせている」と答えています。また、国の機関(IPA)が毎年発表している「情報セキュリティ10大脅威」の2026年版では、会社向けの3位に「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて選ばれました。

中小企業のAIの使い方。会社としては導入せず社員の判断にまかせている64.9%、会社として積極的に使っている31.1%。IPAの情報セキュリティ10大脅威2026では、AIの利用をめぐるリスクが初めて3位に
AIの使い方は「社員まかせ」が約6割

AIはとても便利です。だからこそ、使い始める前に会社として決めておきたいことがあります。この記事では、最低限決めておきたい3つのルールと、ルールのかんたんな作り方をご紹介します。

AIは「とても物知りな、社外の相談相手」

まず、AIがどんなものかを、たとえで考えてみましょう。

ChatGPTなどのAIは、とても物知りで、仕事の速い「社外の相談相手」のようなものです。文章を考えてもらったり、調べものを手伝ってもらったりと、頼めばすぐに答えてくれます。

ただし、相談相手は社外の人です。AIに入れた文章は、インターネットを通って、AIを作っている会社のコンピューターに届きます。サービスや設定によっては、入れた内容がAIの勉強(学習)に使われることもあります。

社員がAIに入れた文章は、インターネットを通ってAIの会社のコンピューターに届く。設定によってはAIの学習に使われることもある。AIは社外の相談相手と考える
AIに入れた内容は、社外に届く

社外の人に、お客さまの名前や電話番号、社内の秘密を気軽に話したりはしませんよね。AIにも同じ感覚で接することが、いちばんの基本です。

「禁止」するだけでは、うまくいかない

「それなら、AIは使用禁止にしよう」と考える方もいるかもしれません。しかし、禁止するだけでは、かえって困ったことになりがちです。

AIは自分のスマートフォンからでも使えます。仕事が速くなると分かっていれば、禁止されても、会社から見えないところでこっそり使われてしまうことがあります。そうなると、何が入力されたのか、だれにも分かりません。

禁止するだけだと、社員が自分のスマートフォンなど見えないところでAIを使い、何が入力されたか分からない。ルールを決めて会社で使うAIを用意すると、安心して使え、会社からも見える
禁止より、「使い方を決める」

おすすめは、「こう使えば大丈夫」というルールを決めて、安心して使える環境を用意することです。そのための3つのルールを、順番にご紹介します。

会社で決めておきたい3つのルール。1 AIに入れてはいけない情報を決める。2 使ってよいAIと設定を決める。3 AIの答えは人が確かめてから使う
会社で決めておきたい3つのルール

ルール1 AIに入れてはいけない情報を決める

いちばん大切なのが、このルールです。「これはAIに入れない」という情報を、具体的に決めておきます。「大事な情報は入れないように」だけでは、人によって受け取り方がちがうので、例をあげて決めるのがポイントです。

AIに入れてはいけない情報は、お客さまの名前・住所・電話番号、カルテや病名などの体の情報、IDやパスワード、まだ公開していない社内の情報。入れてよい情報は、すでに公開している情報、一般的な質問、名前などを含まない文章の言い回し
入れてはいけない情報・入れてよい情報の例
  • お客さまの情報:名前・住所・電話番号・メールアドレス・注文や相談の中身
  • 体や健康の情報:カルテ・病名・検査の結果など(クリニックでは特に注意)
  • IDやパスワード:サイトの管理画面やメールのログイン情報など
  • まだ外に出していない社内の情報:取引先との契約・見積もりの金額、新しい商品の計画、社員の情報など

お客さまの情報については、国の個人情報保護委員会も、AIに入力する前に「使う目的の範囲内か」「AIの学習に使われないか」を確かめるよう注意を呼びかけています。名前を伏せたつもりでも、ほかの情報と合わせるとだれのことか分かってしまう場合があるので、迷ったら入れないのが安全です。

ルール2 使ってよいAIと、その設定を決める

AIにはたくさんの種類があり、同じAIでも、無料版と会社向けの版では、入れた内容の扱いがちがうことがあります。そこで、「仕事で使ってよいAIはこれ」と会社で決めておきます。

社員が個人の無料アカウントで使う場合は、入れた内容が学習に使われる設定のことがあり、だれが何を入れたか会社から分からない。会社で用意したAIを使う場合は、学習に使われない設定にでき、使う人を会社で管理でき、辞めた人の利用も止められる
個人の無料アカウントと、会社で用意したAIのちがい
  1. 仕事で使ってよいAIを決めるできれば会社でアカウントを用意し、それ以外のAIは仕事で使わないようにします。
  2. 「学習に使われない」設定にする多くのAIには、入れた内容をAIの学習に使わせない設定があります。会社向けのプランでは、はじめから使われないものもあります。使う前に必ず確かめます。
  3. 個人のアカウントで仕事をしない社員が自分で作ったアカウントだと、会社からは何が入力されたのか分からず、辞めたあとも記録が残ったままになります。

ルール3 AIの答えは、人が確かめてから使う

AIは、もっともらしい文章をとても上手に作ります。ところが、まちがった内容を、自信たっぷりに答えることがあります。存在しない法律や、まちがった数字、実在しないお店の情報を書いてしまうこともあります。

AIの答えは下書きと考え、人がまちがいがないか、他人の文章や画像をそのまま使っていないか、お客さまに出してよい内容かを確かめてから使う。最後の責任は会社にある
AIの答えは「下書き」。人が確かめてから使う

AIの答えは、あくまで「下書き」と考えましょう。とくに、次のようなものは、人が必ず確かめてから使います。

  • お客さまに送る文章や、ホームページに載せる文章
  • 金額・日付・法律やルールにかかわる内容
  • AIが作った画像や文章(ほかの人の作品に似すぎていないか)

AIが作ったものでも、お客さまに出せば会社が出したものになります。まちがいがあったときに責任を負うのは、AIではなく会社です。

これから増える「AIに操作を任せる」ときの注意

最近は、文章を書くだけでなく、メールを送ったり、予約を入れたり、買い物をしたりと、パソコンの操作そのものをAIに任せる使い方も広がり始めています。とても便利ですが、AIがまちがえたときの影響も大きくなります。

AIに任せる操作の段階。見る・調べるは任せやすい。書く・下書きは人が確認。送る・予約する・支払う・消すは人が最後に確認してから。右に行くほど、まちがえたときの影響が大きい
AIに任せてよい範囲を決めておく

「調べる」「下書きを作る」まではAIに任せても、「送る」「支払う」「消す」といった取り消しにくい操作は、人が最後に確認してから行うようにしておくと安心です。AIに見せてよい情報やサービスの範囲も、あわせて決めておきましょう。

ルールは「紙1枚」から始めればいい

ルールといっても、分厚い規則集を作る必要はありません。まずは紙1枚にまとめて、全員に伝えるところから始めましょう。

ルールの作り方4ステップ。1 今の使い方を聞く。2 入れない情報と使ってよいAIを決める。3 紙1枚にまとめて伝える。4 半年に1回見直す
ルールの作り方4ステップ
  1. 今の使い方を聞くだれが、どのAIを、どんな仕事に使っているかを聞きます。責めるのではなく、「教えてほしい」という姿勢で聞くのがコツです。
  2. 入れない情報と、使ってよいAIを決めるこの記事のルール1と2を、自社に合わせて具体的に決めます。
  3. 紙1枚にまとめて伝える見える場所に貼る、朝礼で話すなど、全員が知っている状態にします。困ったときに相談する人も決めておきます。
  4. 半年に1回は見直すAIの機能やサービスの決まりは、どんどん変わります。定期的に見直しましょう。

紙1枚のルールは、たとえば次のような形で十分です。

項目書くことの例
使ってよいAI会社で用意した〇〇だけ。個人のアカウントでは仕事をしない
入れてはいけない情報お客さまの名前・連絡先・相談の中身、カルテ、パスワード、未公開の社内情報
使ってよい仕事文章の下書き、言い回しの見直し、一般的な調べもの、アイデア出し
必ず人が確かめるものお客さまに送る文章、ホームページの文章、金額・日付・法律にかかわる内容
AIに任せない操作送信・支払い・削除は、人が確認してから行う
困ったときの相談先担当:〇〇さん(迷ったら、入れずに相談)

クリニック・病院の場合

患者さまの病名や検査の結果、カルテの内容は、法律でとくに慎重な扱いが求められる情報です。問診やカルテの内容をAIに入れて文章をまとめる、といった使い方は、医療向けに安全性が確かめられたサービスを除いて避けましょう。受付スタッフの方も含めて、全員でルールを共有しておくことが大切です。

弊社の考え:AIは「止める」より「安心して使える形」に

AIは、人手が足りない中小企業やお店、クリニックにとって、仕事を楽にしてくれる心強い味方です。だからこそ、こわがって止めてしまうのではなく、ルールと環境を整えて、安心して使える形にすることが大切だと弊社は考えています。

3つのルールは、どれも今日から始められます。まずは「AIに入れてはいけない情報」を社内で話し合うところから始めてみてください。

お困りの方は、ご相談ください

弊社では、AIを安心して使うためのお手伝いをしています。弊社が管理していないサイトや会社でも大丈夫です。

  • 自社に合わせたAI利用ルールの「たたき台」づくり
  • 使っているAIの設定の確認(入れた内容が学習に使われないかなど)
  • 顧客情報を社外のAIに出さずに済む、業務システムの開発
  • サイトの見張りと復旧のサービス「蔵番」

AIツールやシステムの導入には、補助金が使える場合もあります。くわしくは補助金の記事もご覧ください。「うちの会社、何から決めればいい?」という段階のご相談でもかまいません。お気軽にお問い合わせください。

参考:商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」/IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」/個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」
※2026年10月30日時点の情報です。AIサービスの機能や決まりは変わることがあります。

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