
この記事について
この記事は、「AIの使い方は、社員それぞれに任せている」という経営者・担当者の方に向けて書いています。むずかしい言葉はできるだけ使わずにお話しします。内容は2026年10月31日時点の情報です。
「AIは便利だし、使い方は各自に任せている」
「とくに問題が起きたとは聞いていない」
そう感じている会社は少なくありません。実際、社員の方はだれも悪いことをしようとはしていません。仕事を早く終わらせたい、お客さまに良い文章を送りたい。そんな前向きな気持ちで、AIを使っています。
ただ、その「良かれと思って」の使い方が、会社の知らないところでリスクを生んでいることがあります。しかも、問題が起きても、会社はなかなか気づけません。この記事では、AIの使い方を社員まかせにしたときに起きやすい7つのリスクと、その解決策をご紹介します。
AIの使い方、「社員まかせ」の会社は多い
2026年1月の調査では、中小企業の約6割(64.9%)が「会社としては導入しておらず、使うかどうかは社員の判断にまかせている」と答えています。
海外の調査(イギリス・アメリカの社員2,000人)では、約半数(49%)が会社の認めていないAIを仕事で使っていると答え、6割(60%)が「仕事が早く終わるなら、多少のリスクは仕方ない」と考えていました。

つまり、会社が何も決めていなければ、社員は自分の判断で、自分の選んだAIを、自分のやり方で使っているということです。そこから、どんなことが起きるのでしょうか。
社員まかせで起こりうる7つのリスク

1. お客さまの情報が、社外に出る
たとえば、営業の方がお客さまからのメールに返信するとき。「失礼のない返事を考えて」と、お客さまの名前や相談の中身ごと、無料のAIに貼りつけてしまう。本人に悪気はまったくありません。
でも、その瞬間、お客さまの情報は社外のAIの会社に届いています。会社として「社外に出してよい」と判断したわけではないのに、です。

2. 入れた内容が、AIの学習に使われる
無料版や個人向けのAIでは、入れた内容がAIの勉強(学習)に使われる設定になっていることがあります。社員の多くは、その設定を確かめずに使っています。海外の調査では、会社の認めていないAIを使っている人の約6割(58%)が無料版を使っていました。
3. 社員の個人アカウントに、会社の情報が残る
社員が自分で作ったアカウントでAIを使うと、やりとりの履歴はその人のアカウントに残ります。見積もりの金額、取引先の名前、社内の相談ごと……。その社員が辞めたあとも、会社の情報は、会社の手の届かないところに残り続けます。

4. AIのまちがいが、そのままお客さまに出る
AIは、まちがった内容をもっともらしく書くことがあります。確かめ方のルールがないと、まちがった金額や日付、存在しない決まりが、そのままお客さまへのメールや資料に入ってしまうことがあります。外に出れば、それは会社が出したものです。
5. 他人の権利を侵してしまう
AIが作った文章や画像が、ほかの人の作品にとても似ていることがあります。気づかずにホームページやチラシに使うと、他人の権利を侵してしまうおそれがあります。
6. 人によって品質がバラバラ。うまい使い方が会社に残らない
AIを上手に使いこなす社員もいれば、まったく使わない社員もいます。社員まかせだと、仕事の品質やスピードが人によってバラバラになります。しかも、上手な人のコツは、その人の頭とアカウントの中にだけあり、会社の財産として残りません。

7. 何に、いくら使っているか、会社が把握できない
社員がそれぞれ有料のAIを契約して経費で落としている、AIをほかの仕事のツールと勝手につないでいる(海外の調査では51%)。こうした状態では、どこに何のデータが流れ、いくらかかっているのか、会社のだれも全体を把握できません。
問題が起きたときの被害は、大きくなりやすい
会社の認めていないAIが関わった情報漏えいは、被害も大きくなりがちです。世界600の組織を調べた調査(2025年)では、そうした漏えいの65%で個人情報が漏れていた(漏えい全体の平均は53%)と報告されています。また、会社の認めていないAIが多く使われていた組織では、漏えい1件あたりの費用が平均で約67万ドル高かったとされています。

そしてなにより怖いのは、社員まかせの状態では、問題が起きたことに会社が気づけないことです。だれが、いつ、どのAIに、何を入れたのか。記録がどこにもないからです。
「禁止」しても、解決はしない
「それなら全面禁止に」と考えたくなりますが、禁止しても、AIは社員のスマートフォンからでも使えます。仕事が速くなると分かっている以上、見えないところで使われ続けるだけです。しかも、AIを使っている会社との差は、どんどん開いていきます。
入れてはいけない情報などのルールを決めることは大切です(くわしくは社員がAIを使う前に決めておきたいルールの記事をご覧ください)。でも、ルールだけでは「守られているか」までは分かりません。そこで必要になるのが、会社が用意した、安心して使える入れ物です。
答えは「社内専用のAIエージェント」
社員まかせでも、全面禁止でもない、3つ目の選択肢。それが、会社が用意し、会社が管理する「社内専用のAIエージェント」です。社員はいつもどおり話しかけて使うだけ。でも、その中身は会社のルールで守られています。

- 会社の情報は、会社の管理する入れ物の中で扱う:入れた内容をAIの学習に使わない設定で動かせます
- 見てよい範囲を決められる:給料や個人の情報など、人によって見せる範囲を分けられます
- だれが何をしたか、記録が残る:問題が起きても、あとから確かめられます
- 辞めた人は、すぐに止められる:情報が個人のアカウントに残りません
- うまい使い方が、会社に貯まる:よく使う質問や手順をみんなで共有でき、品質がそろいます
- 費用が一か所で見える:だれが、どれだけ使ったかが分かり、上限も決められます
さらに、社内専用のAIエージェントなら、売上・請求・問い合わせ・日報など会社のデータとつないで、「聞けば答える」秘書のように使うこともできます。リスクを減らしながら、AIの便利さをいちばん大きく受け取れる形です(くわしくは社内のAIエージェントの記事をご覧ください)。
3つのやり方を比べると

| 社員まかせ | 全面禁止 | 社内専用AIエージェント | |
|---|---|---|---|
| 仕事の速さ・便利さ | 人による | 使えない(建前上) | 全員が使える |
| 情報の安全 | 守れない | 見えないところで使われる | 会社のルールで守れる |
| 会社が把握できるか | できない | できない | 記録で確かめられる |
| うまい使い方 | 個人に残る | 育たない | 会社に貯まる |
いきなり全部でなくて大丈夫。3段階で進める
社内専用のAIエージェントといっても、明日からすべてを入れ替える必要はありません。会社の状況に合わせて、少しずつ進めれば大丈夫です。

- まず、ルールを決める入れてはいけない情報、使ってよいAIを決めて、全員に伝えます。今日から始められます。
- 会社のアカウントにまとめる個人のアカウントで仕事をするのをやめ、会社で用意したアカウントに切り替えます。入れた内容が学習に使われない設定も確かめます。
- 社内専用のAIエージェントへ会社のデータとつなぎ、見てよい範囲と記録の仕組みを整えます。ここまで来ると、AIは「リスク」から「会社の力」に変わります。
弊社の取り組み
弊社では、社内のデータに話しかけて聞ける「ZEN AIエージェント」を自社で作り、毎日の仕事に使っています。だれが何を聞いたかの記録、見てよい範囲の設定、バックアップまでそろえた、社内専用のAIエージェントです。
現在、この仕組みをもとに、企業さまごとにオーダーメイドで設計し、導入する仕組みを開発しています。社員まかせのAI利用を、会社の力に変えるためのお手伝いができればと考えています。
お困りの方は、ご相談ください
- 社員がどんなAIをどう使っているか、まず整理したい
- AIの利用ルールの「たたき台」を作りたい
- 会社で使うAIのアカウントや設定を見直したい
- 社内専用のAIエージェントを、自社に合わせて導入したい(提供に先がけてご相談を受付中)
自社に合わせたシステムの導入には、補助金が使える場合もあります(補助金の記事)。「うちは大丈夫かな?」という段階のご相談でもかまいません。お気軽にお問い合わせください。
参考:商工中金「中小企業の生成AIの利用にかかる調査(2026年1月調査)」/BlackFog「シャドーAIに関する調査」(2026年1月公表・イギリスとアメリカの従業員500人以上の企業に勤める2,000人)/IBM「Cost of a Data Breach Report 2025」(世界600組織)
※2026年10月31日時点の情報です。